映画「ウィリーズワンダーランド」2021 主人公が一番【恐怖条件】を満たしている件

映画

アマゾンプライムで配信中の「ウィリーズワンダーランド」(2021)(88分)を鑑賞。

えいまんぼん
えいまんぼん

製作・主演:ニコラス・ケイジ
端的に言うと、ニコラス・ケイジを楽しむための映画です

あらすじ

田舎道を進む車が、いたずらによってパンクする。
降りてきたのは、結局最後まで名前すらわからない主人公・ニコラスケイジ。

車の修理が現金払いのみだったため、手持ちのなかった彼は廃墟となった屋内型テーマパークを朝まで掃除することになる。

しかし、これはテーマパーク、ひいてはこの田舎町の陰謀。
彼はパークに住む、殺人アニマルロボットたちへの生贄とされたのだ。

パークと因縁を持つ少女・リヴが率いる町の若者たちや保安官などが出てきて、パークの恐ろしい過去や、残虐な死亡シーンなどが描かれる中、主人公は、一言も発することなく淡々と掃除をこなし、適宜休憩を取り、殺人ロボットたちを、ただ暴力で返り討ちにしていく。

感想と考察

はい、お察しの通り、カオス映画です。コメディ? コメディなのかな?
Wikipediaみたら、『アクションコメディホラー映画』って書いてありました。長いわ。
正直、ニコラスケイジがいなかったらB級にもなれない、めちゃくちゃ意味不明な映画です。それでいて謎の爽快感があります。そのせいでB級とも言い切れない。なんだこれ?
不思議な世界を垣間見たい方は、アマプラで無料で見られるので気楽に見て欲しいです。88分と短めですしね。たぶんホラーがダメな人も大丈夫なのではないでしょうか?

ホラー映画に必要な3要素

ところで皆さん、ホラー映画で怖さを表現するための条件ってなんだと思いますか?

私は、大きく3つあると思っています。

①視聴者目線で(過度になりすぎず)程よく恐怖する者がいる
②恐怖対象がなにかしらの「恐怖する側より強い力」を持ってる
③恐怖対象との意思疎通が不可能(あるいは困難)

①については「自分より焦ってる人を見ると落ち着く」理論で程よさが大事。
それでいてなぜこれが必須かというと、恐怖の演出的な問題。ちゃんと恐怖事象を受けてリアクションをする演者がいないと「恐怖」が成り立たないということです。

②は単純。簡単に倒せてしまう怪異は恐れる必要がほぼない。

そして③。これがないホラー映画、結構洋画とかに多い気がします。割とジャパニーズホラーによく見られる演出。
「シックスセンス」とかを思い出していただければわかると思うんですけど、(まあ一応ネタバレ配慮しておくと)霊感体質の少年がとある幽霊と会話ができたことで、幽霊を徐々に受け入れるじゃないですか。要はまともな会話ができてしまう怪異は怖くないんです。それでクライマックスでは自分から、今まさに恐ろしい挙動をしている幽霊に「何をして欲しいの?」と聞く。コミュニケーションで恐怖から脱却していくのが少年の成長なんです。


そして、この映画には3要件を全て満たすキャラがいます。
その人物こそ、

主人公ニコラス・ケイジ

です。

えいまんぼん
えいまんぼん

正直言うわ
な ん で だ よ

前述のとおり、この作品においてニコラス・ケイジは一言もセリフを発しません。
バックボーンはおろか、名前すらわからない。
まあ、殺人ロボットに襲われている最中にも、休憩を知らせるタイマーが鳴ったら休憩をとりにいくような男なので、普段はよほどホワイトな環境で働いているのでしょう。

そして、いくら「ここは危険だ」と少女・リヴが伝えても、凄惨な殺害体を見ても、明確な殺意を持って襲われても、淡々と掃除を続けます。

まさに『意思の疎通ができない存在』
主人公キャラとして一番困難であろう③を達成してしまいましたね。

①についても、ちゃんと描写があります。
殺人ロボットをあっさりボコボコにしてしまう主人公を見て、呆然として怯えたような反応のリヴのカットがあります。殺人ロボットに襲われてる最中に休憩に行ってしまう姿も目撃していますね。リヴちゃん、もはや可哀想。彼女、放火する前に君を助けに入ってきたんだけど分かってる?

②は、もう言うまでもないですね。
あまりにも強い。ほぼ素手なのに殺人ロボットより強い。暴力は全てを解決する。
……と、ここまで、ニコラス・ケイジ演じる掃除人が映画上の恐怖対象としての要件を満たしているというお話をしてきたんですが、「やってることやばいし、何者かまったくわからんけど、まあ主人公だし……」と思いながら視聴するので、特にホラー的な恐怖感を与えてくる存在ではありません。むしろ「こいつなら絶対生き延びるわ」と安心して鑑賞できます。不気味ではありますが。

要は恐怖条件の達成自体が、『怖いモンスターたちに、それを凌駕する怖い条件をまとわせた無敵の男をブチあてた』というコメディ的な要素として使われてるんですね。

まあ、現実にいたら……と考えると普通に怖い人物なんですけど。

得体のしれない主人公の正体

はい、そんな3項目を見事クリアしてコメディとして昇華された主人公の挙動。

・一言もしゃべらず出自不明、ネームレス
・戦闘して然るべきシーンで休憩
・とにかく強い

……なにかで見たことありません? いや、多くの人があると思うんですよ。

焦らす必要もないと思うので端的に言いますと、ゲームのプレイヤーキャラです。
あまりキャラ設定が作り込まれていない場合に限りますけどね。

彼らはプレイヤーの代理なので、

・一言も喋らない、出自不明なキャラであることが多く、
・重要なイベント中でも突然戻ってセーブとか回復とかしちゃうし、
・一応クリアできるように設定されてるから勝てちゃう

ボス的なキャラクターに邂逅した時にタイマーが鳴って休憩するシーンなんて、「あ、次話しかけたら戦闘だ。その前にちょっと戻ってセーブしておくか」っていう、セーブ式のゲームやったことある人なら誰もがやったことある動きだと思うんですよね。

つまりこの作品、『襲い来る殺人ロボットを退けて朝までに掃除を完遂するゲーム』を、ゲームそのまま、プレイヤーの挙動含めて一切改変なく映画化したような構成なんですよ。

なので「これは映画だ」と思って観るとカオスだという感想になって然るべきです。

えいまんぼん
えいまんぼん

いや、映画なんですけどね

まとめ

というわけで、『恐怖条件のコメディ昇華×メタ的なゲーム感』という異色の雰囲気を醸し出す映画、「ウィリーズワンダーランド」をご紹介しました。

星をつけろと言われたら、正直3つくらいしかつけられないんですけど、とりあえず騙されたと思って一度見て欲しい映画です。
なんというか、他人の感想を聞くために他人におすすめしたくなるタイプの映画なんですよね。

というわけで、

えいまんぼん
えいまんぼん

さ、みんな
アマプラ開いて! さあ!

以上です。ここまでお読みいただきありがとうございました!

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