小説「リコリス・リコイル」時系列図で見るあらすじと感想・小説単体でも読める?+特典あらすじ

「リコリス・リコイル」は2022年7月2日~9月24日に放送された全13話のオリジナルTVアニメ。
所謂『覇権アニメ』で、SNSなどでも大変な盛り上がりが見られました。

ご紹介するのは、アニメのヒットを受けて、放送期間中である2022年9月9日に発売されたスピンオフ小説「リコリス・リコイル Ordinary Days」

こちらも異様な初動で売れ、発売前に重版がかかっています。
実際レビューサイトでの評価も高く、「これがみたかった!」というアニメファンの声が多く寄せられました。

えいまんぼん
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著者は、アニメ原案者でもあるアサウラ氏。
あとがきでは、あまりの締切の短さと発売日の早さに困惑したコメントが見られます。

基本的には、アニメ視聴者をターゲットに絞った5話構成の短編集……とみせかけて、各話が絶妙につながっている構成になっています。

基本設定とあらすじ(時系列図)

まずはアニメ版の基本設定のご紹介。
大体1話ごとに1か月の時間が流れる構成となっており、約1年の出来事を描いた作品になっています。
アニメ完結前に発売された小説ということもあり、基本設定だけ押さえておけば、ギリギリ小説からでも読めなくはない構成なので載せておきます。

アニメイントロダクション

日本の平和を秘密裡に守る戦闘組織リコリス。
組織は未成年の女子で構成されており、彼女らはいつも制服を身に着けて街に溶け込んでいる。

組織に所属する井ノ上たきなはその戦闘中の行動によって、「喫茶リコリコ」への転属を命ぜられる。
彼女がリコリコで出会った錦木千束は、凄まじい戦闘力と「殺しをしない」という信念をもって様々な小さな事件をも解決していく、優秀かつ自由なリコリスだった。

たきなは千束や喫茶リコリコのメンバーとの交流を経て、徐々に価値観を変えていく。

しかし、千束にはある秘密があり、後半はその秘密を巡る物語になっていく。

続いて小説版のお話。
完全にスピンオフ。本編の合間にこういうことがあったよ~みたいなノリの短編集です。
小説版で描かれている時期は、アニメの序盤~中盤。初夏のお話です。3話~5話頃ですかね?

短編集なのですが、構成がそこそこに凝っていたので、今回は文章ではなく図説であらすじ……というか、各話の時系列的つながりをご紹介。

えいまんぼん
えいまんぼん

小説版のストーリーを時系列に並べた画像が出ます
ネタバレなのでご注意を!

小説版リコリス・リコイル時系列図

感想(主に構成について)

この作品についてのレビューでよく見られるのが、とにかく食べ物の描写が細かいこと。
私も飯テロ本の類で間違いないと思います。
鼻に抜ける香りや温度まで丁寧に描写されており、冒頭などではもなかを炙る音まで描写されています。和菓子とコーヒーが主な食べ物ですが、たこ焼きなども出てきて、まさに紹介文にある「オマケ付きお菓子のバラエティパック」という言葉がしっくりきます。

そんな、飯テロにばかりフォーカスされがちなこの本。
実は、「短期間で書いたんですよね?」と思わせられる程度には短編集としての構成が綺麗です。

まず1話がいい。
1話は、小説版オリジナルキャラの50代の男性、土井善晴が主な視点人物です。
うまいなあと思うのは、ここでこの本で描かれる全期間を一気に出したこと。

この後の流れは基本的に、1話のここで実はこういうことがあったよ! という種明かしめいたものです。

さらには、間に挟まる短いイントロダクション等では(全部のイントロではないですが)、フリーライターの徳田和彦が雑誌の企画を進めていく様子が描写されており、ラストに向けてわかりやすく進んでいきます。

そして最終の5話で、各話の緩いつながりがきっちり伏線として回収される

ただのスピンオフ短編集として認識して読んでいたので、この構成の良さは予想外でした。

まあ、正直4話の夢オチだとずっと言及されながら進むゾンビ回などは、なんで入れた? と思わなくもないのですが(そこに組織の話など、設定に関わる話を少しでも入れれば、本当に小説単体でも読めるものになったのではないかという思いがどうしても……)、まあ、めちゃくちゃにファンサしまくってる話なのでこれはこれで必要なのでしょう。

要はこの小説、多視点で同じ時期のある部分を掘り下げたり補足したりしていくことで、彼女たちのもつ多面的な顔が存分に描写されているんですね。

そしてその情報が徐々に開示されていくペースや時系列の示唆、はたまた「あれあの子だったの⁉」みたいな描写は小説ながらの小技で、媒体の強みが生かされていて好印象。

また、この多面的なごった煮感がアニメ・リコリコの大きな魅力だったので、本当にファンにとっては嬉しい一冊です。

まとめると、まさにファンが見たかった(=ファンが良質な二次創作でやりそうな)ストーリーで公式の隙間を埋めたものを公式から出す……というファンサとして大正解な題材を選んだ上で、構成はなかなか凝っているそんな小説です。

質問「小説単体でも読めるの?」

はい、正直言ってこれは、ノーです。
めちゃくちゃ残念ながら。

ラノベとしての質はいいんですよ。色々仕掛けもあって。
それだけに、小説が単体で入口になりづらいものだったのが少し残念。
そこに仕掛け入れるなら、もう少ーしだけ入口にも工夫を……! と思わざるを得ない。
本当にあと一手が足りないんです……ミカ視点とかでこう、組織(DA)と裏でやり取りする後ろで千束たちが騒いでる話でもぶち込んでおけば、入口としてもおすすめできるものになったと思うんですよね……。

もし、「リコリコアニメ完全未視聴だけど読める?」と聞かれたら、「少なくとも基本設定は知っていないとちょっとわかりづらい」と答えるしかないです。
逆に「流行ってたからなんとなくの流れとキャラは知ってる」という方には「概要さえ知っていれば読めるから読んでみて」と言えます。

えいまんぼん
えいまんぼん

作者も、アニメ3話まで見ていれば読める内容、というコメントをしているそうですね


はい、というわけで、アニメしか見ていないという方、アニメの概要しか知らないという方。
飯テロガンアクション可愛い女の子にご興味がありましたら、小説版「リコリス・リコイル」、一度お手に取ってみてはいかがでしょうか?

補足情報
小説版リコリコは、発売当初様々な特典がついていました。

筆者の手元にあるのはたきな視点の、ミズキに焦点をあてたSSです。
なかなか目にする機会がもうないかと思うので、ネタバレあらすじを残しておきます。

『中原ミズキと朝の草花』あらすじ

前日深夜までボードゲームに興じ、千束がごねたことでリコリコで一泊したメンバー。
早朝、たきなが目を覚ますと、そこには完璧に身支度を整えたミズキがおり、これから草花の水やりをするという。
手伝いを申しいれ外の草花を担当したたきなは、ベランダから通行人に挨拶するミズキに感銘を受ける。――結構ちゃんとした人だった、と。
しかしそのことをクルミに言うと、返ってきたのは呆れた声だった。

「朝から花に水をやるカフェ店員っていうシチュエーションがやりたいだけだ、アレ」

曰く、普段は店長であるミカが水やりをしており、今日は天気がいいから『自分が綺麗にみえるお立ち台』で男を釣っている、と。
外からは、ちょうど一人の男性が釣れた声が聞こえていた。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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