映画「花束みたいな恋をした」ネタバレ考察|花束とは?|語られる「類似性」見せられる「差異」

花束みたいな恋をした 映画

この物語は、最初から二人の「今」が交わっていないことを示して始まります。
そこで提示されるのは、「今」でも二人の思考回路は酷似していること。

そんな二人がどう出会い、「どう別れるのか」

ファーストカットから、それを追う映画であることは隠されません。

つまり、映画は最初から、
二人の関係がやがて下降していくことを宣言して始まります。

実際に後味は一見して、穏やかなメリーバッドエンド。

この映画には「そう見せる」ための「仕掛け」が散りばめられています。

それが
「類似性」と「差異」の、意図的な書き分けです。

えいまんぼん
えいまんぼん

ネタバレ考察なので、
本編を見てからの閲覧を推奨します!

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①語られる「類似性」

二人の恋はタイトルでは「花束」と表現されています。
しかしこの映画、直接的にキーアイテムとして「花束」は出てきません。

つまりここで、タイトルを成立させるためには、観客に

『二人の恋は「花束」のようだった』

と思わせなければならないという必須事項が発生します。

それを演出的に支えるのが【モノローグの多用】です。

・共通する趣味
・共通する感性
・共通する思考

これらは、モノローグで二人それぞれの視点で二重に描かれることが非常に多い。

特に、出会いから付き合うまでのシーンで顕著な演出です。

その後、二人は順調に同棲生活をはじめます。

ここで「仕掛け」として効いているのが、冒頭のシーン。

冒頭は、二人のカットが交互に切り替わり、
お互いの言葉の続きを引き受けて「全く同じ内容を話している」
という場面なのですが、

これがあるおかげで、中盤の二人が交互に日記のように日々を語るシーンでは

『語らない側も同じことを言っている』

という錯覚にも似た印象が生まれます。

交互に、1本ずつ、花を添えていくように、二人の日々がつづられる。

そしてこの言葉に行きつきます。

「僕の人生の目標は絹ちゃんとの現状維持です」

これが、二人の恋の最高潮を表す言葉。
このシーンをきっかけに、二人の時間は少しずつ、しかし確実に下降に向かいます。


②見せられる「差異」

就職を決めたことで、ここまでの「類似性」に変化が生じます。

・生活のリズムが変わる
・時間の使い方が変わる
・優先順位が変わる

そんな流れが、序盤とは打って変わり、
モノローグのほとんどない「シーン」として見せられる。

喧嘩の場面でも序盤のように「丁寧に思っていることが語られる」ことはありません。

基本的にただ、「実際に発した言葉」だけが積み重なる。
お互いが知る、お互いの「差異」として。

もちろん、ここでもモノローグはあります。
ただし、このモノローグは、最後までお互いには開示されない異なる意見として、観客にだけ提示されるものです。

また、決定的なシーンの演出も特徴的。

前半のように二人それぞれの視点で2回描かれるシーンがあるのですが、このシーンでは、二人が「同じこと」を思っています。

「なんかもう、どうでもよくなった」と。


③「類似性」だけが残る結末

二人はお互い、同じ日に、全く同じ思考で、相手に別れを告げることを決めます。

それを友人に語るシーンは、冒頭と同じく、交互に切り替わるカットで「同じ内容を話している」という形で描かれます。

つまり二人は、
「同じことを考えた結果、別に歩む未来を選んだ」のです。

ここまでの演出で、観客の記憶に残るものは何か。

演出の比重から考えても、明らかに二人の「類似性」でしょう。

これは、
恋人たちが「過ぎ去った、どうしようもなく同じだった思い出」を
花束のような美しさで、記憶の中に閉じ込める話
です。

そして、

「類似性」を「モノローグ」でわかりやすく反復して
「差異」を「映像」でさらっと進める流れ
だから、

観客に強く残るのは、二人の「類似性」と「花束のような時間」
――つまり、二人が別の道を選んでも閉じ込めたかったものなのです。


④「花束みたいな恋」

「花束」は自然に咲く花を、一部のみ人工的に美しく束ねたものです。

「花束みたいな恋」という言葉通り、
この恋は「美しかった思い出だけを美しいまま束ねる」という形で終わります。

つまりこの映画で観客は、
二人が花を育て、最後にはきれいな花だけを切り取り、束ねる
――そんな一部始終を見守ることになります。

二人の物語が切なく、尊く、美しく見えるのは、そこに人工的な思惑が加わっているからです。

類似性をひたすら印象的に強調し、
差異をただあるものとして流す演出
です。

そしてその演出意図は、二人がその結末を選んだ理由と合致します。
演出と、ストーリー上の選択が同じ方向を見ている。

それゆえ、この作品は、観客に違和感を与えず、優しくも切ない想いだけが残る、タイトルに偽りのない、ひとつの恋を花束にする映画になっているのです。

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